「朱鳥、あーすーか。もうそろそろ、起きなよ?まだ、寝てるの?早く…起きてよ………。」

朱鳥が意識を失ってから、二週間。

朱鳥は、まだ長いお昼寝の中にいる。

「朱鳥、この前は、ごめんね?


痛かったよね…治療が辛かったんだよね?


でも朱鳥、もう治療は終わったんだよ?


一週間、朱鳥が頑張ったから、結果も少しずつ良くなってるんだよ?


もう、普通の病室に戻ったんだよ?


これからは、無菌室に居なくていいんだよ?


一時帰宅も許可したから、また、家に帰れるよ?


ねえ、朱鳥……………起きてよっ……!!


早く、一緒に帰ろ?


帰ったら、なんでも好きな事できるから!


また、水族館に行こ?


水族館じゃなくてもいい。


遊園地でもショッピングモールでもっ!


どこでも、朱鳥の好きな所行こ?


なんでも好きな事いーっぱいやろう?


朱鳥が、やりたかった事全部やろう?


朱鳥がっ…………


朱鳥の笑顔が見れるなら……


朱鳥が笑ってくれるなら、俺は何でもするっ!!


…………………………だから……お願い………………目……覚まして?」

俺は今、酷い顔をしてるだろう。

涙で顔がグチャグチャで、きっとすごくブサイクだろうな。

両手で包み込むように、朱鳥の小さな手を取る。

そのまま、ギューッと朱鳥の手を握った。

陽向には、もう一生、目を覚まさないかもしれない。

と言われた。

でも、そんな事ないよね?

そんな事ないって証明してよ?

俺、朱鳥がいないと無理だよ……

朱鳥がいない、この世界がこんなにつまらないなんてね…

こんなに、つまらないと思ったのは初めてだよ。

「……朱鳥……………………」

もう一度、ギュッと手を握る。

すると

とても、弱い力で少しだけ、握り返してくれた気がした。

「朱鳥っ!?ねぇ、朱鳥!本当は、目、覚めてるんでしょ?何かのドッキリだよね?ねぇっ!!」

俺の悲痛な叫びは、朱鳥には届かず、その日、朱鳥が目を覚ますことはなかった。