この表情も、彼のほんの一部分なのかもしれない。私はまだ五十嵐くんのこと、全然知らないのかもしれない。 そう思ったら、なんだか途端に寂しくなった。 どんどん欲張りになっちゃって嫌になる。 最初は、学校でその姿を見つめていられるだけで満足だったのに。 友達になって距離が縮まったら、もっともっと近づきたくなるんだ。 ーー『……好きにならないように頑張ってる時点で、もう手遅れだと思うけどね』 昼休みのアキちゃんの言葉が、頭の奥でこだました。