魔法使い、拾います!

言い訳は空振りに終わり、当のヴァルはといえば気に留める様子も見せずパンを口に運んでいた。やはり気に障っただろうか。リュイの方が主であり立場は上のはずなのに。なぜだろう、やたらとヴァルの機嫌が気になってしまう。

「あの、あのね。私、魔法使いのことよく知らないからさ。杖をこうしているだけのイメージしかなくて、ごめんね。体力要るんだ?」

リュイはスプーンを軽く振ってみた。

「基本、魔法は魔法使い本人の能力次第ですから。呪文は魔法使いの武力や知力に比例したモノしか出せません。何事も努力ありきなのです。」

「武力?武力も必要なの?」

またやらかしてしまったと、言ってから後悔した。ヴァルの両親は戦いで命を落としたと聞いたばかりなのに。つい、あからさまにしまったという顔をしてしまう。

「守護職にある以上、武力は不可欠ですよ。魔法に頼らず何かを成し遂げなければならない場面は、少なからず想定しておかないとね。だから今回のような時でも、魔法を使わずにいられるわけですから。」

今の表情を見て気遣ってくれたのだろう、ヴァルは軽く笑って見せた。そして思い出したように付け加える。

「あっ、そうそう、主の不安を取り除くためにも言っておきますけどね。昨日僕がやられたのは、相手の二人が守護長クラスの魔法使いだったからですよ。もう二度とあんな無様な姿を見せることはしませんので、ご心配なさらず。」

人の気も知らないで、こうやって無防備に優しい一面を見せてくるのはずるい。ティアのこともこうやって優しく守っていたのだろうか……。

リュイは何気なく頭に浮かんでしまった思いを、ぶんぶんと消し飛ばした