会場内の婦人達に苛ついても仕方がないので、目が合ったルイ君にはとりあえず微笑を返しておいた。ルイ君が『群さんって凄いんですね……』と小声で言う。凄いというよりむしろ、呆れて笑いさえ出てきてしまうのだけどね。一体何メートル先の女まで、この男は悩殺する気なのだろう。

 アタシ達の会話に気付いた群が『何だ?』と問うが、アタシとルイ君は『別に何も』と返す。余計なオーラを垂れ流す大人にはなりたくないものね。ええ、そうですね。アタシ達は目で、そんな言葉を交わした。

 ――宴も終わり、クレオファミリーやルッツさん達に暫しの別れを告げる。ジェット機に乗ったアタシ達を地上で見送る彼ら。ルッツさんは白いハンカチをブンブンと振っていて、部下に苦笑されている。酔って呂律が回っていなかった。

 機体が上に向かうと、群とソニアとグレイはルッツさんの姿を思い出して大爆笑。運転席のガルシアが『騒がしい方達ですね……』とぼやくのが聞こえる。



「……Hasta luego.(またね。)」



 喧騒の中、遥か眼下の人達に向けて呟く。晴れ渡るメキシコ上空に煌めいている星達はきっと、クレオのこれからを暗示しているのだろう。