クレオファミリーのボス就任式の招待状が届いたのは、それからすぐのこと。一度イタリアに帰った群だけど、急遽決まったその式に参加すべく、再びこちらへやってきた。相変わらず、クレオは思わぬ行動に出るらしい。ボスが変わっても、全体的なファミリーの気質は変わらないのね。



『未来、支度出来たか?』



 ローサの女性陣御用達の美容院、“Bonita”から来てくれたパトリシアに髪結いをしてもらっていると、戸外から婚約者の声がした。パトリシアが『群!もう少しだけ待って』と告げると、『了解』の返事と共にクスリと笑む音が聞こえた。

 完璧だわ、と呟いたパトリシアに『ありがとう』と返し、バッグを片手に席を立つ。久し振りにドレスアップしたアタシを、彼はどう思うだろうか。



『……お待たせ。』



 部屋を出ると、視線が交わり優しく微笑まれた。群はいつもの黒スーツに、今日はグレーのシャツと黒のネクタイを合わせている。胸元のハンカチの空色が、何だか眩しい。

 アタシはといえば、薄紅のカクテルドレスの上に、襟元に藍色のコサージュが付いた薄手の黒いコートを羽織っている。髪は緩く巻いて後ろでまとめ、毛先を散らしてある。