『それにしても、ドン・クレオはまだなの?向こうから今日の約束と時間を指定したんでしょ?常識がなってないわね。』



 何故か婚約者とペアにされた愛用のブルガリの腕時計に目をやれば、長針は約束の11時を半分通り過ぎている。今日も時間にルーズなのね……だから39になってもなかなか結婚出来ないのよ。

 四つの溜め息が奇妙な一致を見せたけど、誰もツッコまない。それだけ精神的に疲れているのだ。ドン・クレオが現れる前なのに。

 そんな時、長らく鳴っていなかった店のドアベルがカランと音を立てた。そちらを見れば、いかにも金持ちといった身なりをした態度のデカイ男がのしのしとこちらに向かってくる。後ろにはいつものペコペコとへつらう部下達を連れていた。



『やぁドン・ローサ!待たせたな!!』

『やぁ、じゃないわよドン・クレオ。いつも時間に遅れてくるようじゃ、誰も良い印象は抱かないと思うのだけど。』

『そうかい?なら、これからは気を付けるとしよう。愛しいドン・ローサからの頼みだ。』



 ドン・クレオことホワン・アルバラードは、スッとアタシの右手を取って口付けた。相変わらず扱いだけは丁寧だこと。