『あーあ。ボス、また派手にやっちゃったのね。』



 仕方のない人だなと言いたげな口調で、紺色の作業着を着て、ウェーブがかった長い赤毛に白いタオルをバンダナのように巻き付けているパウラは、黒のショルダーバッグをゆっくりと下ろす。中から何やら道具を取り出して、彼女は瞬く間に床を直してしまった。室内には自然と拍手が起こる。



『どうもどうも!ボスのやんちゃには慣れたもんよ。あなた達三人は知らないかもしれないけど、昔はもっと独創的で危ないことをやらかして下さったからね。』



 クスクス笑いながら言い、パウラは会釈して部屋を後にした。アタシは彼女が言った“独創的で危ないこと”について考えてみたけれど、さっぱり記憶にない。最も近しい部下である三人は『ボス、わたくし達がここに来るまでに一体どんな“事件”を起こしてたんでしょうね』、『ボスのことだからきっとハイレベルよ』、『いやいや、意外と年相応なことやってたんじゃねぇか?』などと勝手な討論を始めている。

 “そんな話し合いをする必要はない”と睨んでやれば、三人は『すみませーん……』の言葉と共に退散。それぞれの片手には、しっかりと好みのワインが握られていた。