日本で梅雨が近付いた頃に現れるという、不気味な茶黒い輝きを放つ物体を見た女性のような叫び声を上げ、男達はあっという間にアタシの前から姿を消した。一般人に銃口を向けることはないに等しいけれど、ああいう奴らは威嚇して追い払うに限る。銃声を聞き付けた人々が路地裏にやってくるよりも早く、アタシは身を翻して店内へと舞い戻った。

 ソニアがすかさず『お帰りなさいボス。案外早かったわね?』と言う。『まぁね』と返して窓の外に目をやれば、誰が呼んだのか数人の警官がウロウロしていた。



『……発砲したの、マズかったかしら。』

『ちょっとね……警察は法に従って人を裁く組織だから、私達とは違うもの。まぁ、ウチのファミリーは先代のお陰で警察からも一目置かれてるみたいだけどね。ボスのお父様、警察とも繋がりがあったらしいじゃない。』



 ソニアが言うことに間違いはない。一般にマフィアは法に従わない人間の集まりだけど、日本の暴力団のような反社会組織とは違う。

 アタシ達の仕事は“法で裁けないものを片付けること”であり、時には人を殺すこともある。受けた依頼をこなして報酬をもらうという殺し屋とは、また違ったものなのだ。