アタシが近付いて行くと、男達は肘をつつき合って喜びを露にした。何て分かりやすい奴らなの……アタシはあまりのおかしさに失笑してしまった。

 奴らはそれを好意的な笑みだと誤認したらしく、気持ち悪い程の爽やかな笑みを返してきた。まぁ、この方が都合が良いんだけど。アタシは奴らのテーブルに左手を乗っけて、深く考えていない風を装って話しかけた。



『ねぇ、お兄さん達暇?ちょっとお話しない?』

『俺達は別に構わないけど、連れは良いの?』

『そうそう、連れの人達に悪いって……』



 見え見えの嘘なんてつかなくて良いのに。ニヤけている口元が何よりの証拠だ。男達はアタシを品定めするような目で見つめている。どうせなら真っ赤なスリット入りドレスでも着れば良かったかしら……いや、そんなことを口にしたら小舅秘書に怒られてしまう。

 アタシはただ、ニコニコしながら相手の出方を窺う。この笑顔に落ちない男はなかなか居ない筈だ。何せアタシは、かの有名な美形マフィア一家・エストレジャ家の父と元モデルの母との間に生まれた子だもの。計算された笑顔を向けて待っていると、一人が耐えかねたように口を開いた。