言っているうちに思い出したのか、不機嫌そうに言う。

「大体さ、江藤は高木に甘いんだよ。俺が江藤を甘やかしたいって思ってるのに、全然気付かずに高木を甘やかしてさ。
俺の行動だってかなりわかりやすかったのに全然気付かないし。
あんまり気づかないから、高木の事好きなんだってしばらく勘違いしてたぐらい。」

「へ!?高木君なんて好きじゃないよ?」

木崎君の腕の中から見上げて言うと、「分かってる」と優しく笑ってくれた。

「それは一緒に仕事してから分かった。多分、俺に好意持ってくれてるって事も。でもさ、江藤は俺には素直になってくれなくて、甘えてくれなくて、さ。」


このまま告白しても、強がる事が通常運転になっている私は木崎君の前で素直にはなれないだろう。どうしたらいいか悩んでいた時に、人事異動の話が持ち上がったらしい。


「山口さんの事とか、優しい江藤には辛いと思うこともあるかもしれないとは思ったけど、一緒に仕事してもっと近付けたら、なんか変わるかもしれないと思ったんだ。
それに俺自身がちょっと精神的に限界来てて。江藤に助けてもらいたかったし。」