そのまま引き寄せられて、体は木崎君にもたれるように寄り添う。木崎君は頬から後頭部に移動させた手で私の頭を抱えるようにしたまま、「ありがとな」と呟いた。


その体勢のまま、髪を撫でながら木崎君は話を続けた。


人事に移動した後、木崎君はすぐに調査をしなかった。疑いから入るのではなく、課員を信じてから調べようとしたのだと言う。
信じてそれから調査して裏切られたら傷付くのは木崎君なのに、みんなを疑う事の方が辛かったから、と。


そして数ヶ月前、山口さんの不正を見つけた。

ただ、山口さん自身はなんの不正もしていなくて。付き合っている資材管理課の課長の頼みで不正に書類を改ざんしていたのだ。


「盲目的に好きだったから、騙されちゃったのかな。」と山口さんも自嘲していた。

課長自身の不正申告はもちろん、彼の部下の不正申告のためにも書類を改ざんしていたのだという。