空気を変えるように、あえて硬い話し方で言うと「敬語、やっぱイヤだわ」と文句を言いつつ、頷いた。

「うん。それが今回の突然の人事移動にも絡んでる。山口さんの仕事のやり方はいろんな偶然が重なって、またまたああなっただけなんだけどね、それが弊害を生んでる。
その害を取り除くために、江藤には急ピッチで引き継ぎして欲しいんだ。」

真剣に、そして難しい顔で言うのを見ると、心配になってしまう。


まだ部下になってたった3日だけど、それでも木崎君がどれだけ信頼されているかが分かる。年上の部下や早い昇進、彼の事を快く思わない人だっているはずなのに、部署内で彼はその仕事や人柄で絶対の信用と信頼を得ているんだ。


そしてその信頼に応える様に、木崎君は仕事をこなしている。平然とこなす姿からは想像出来ないけど、その仕事量は多いし責任は重い。

そんな状態なのに、更に解決さばき問題を抱えているなら、出来るだけ助けになりたい。彼が評価してくれる以上の力を出したい。

「うん。私、頑張るね。」

笑顔で答えると、木崎君は一瞬驚いた顔をして、ふわりと笑った。