うちの会社では人事に配属された人間はわりとそのまま人事にいる事が多い。
総合職だとあちこち経験した後に昇進と同時に人事に移動することもあるけれど、一般職では移動はまれだ。

それは部署の特異性とか、扱う情報の機密性とか、そんな事も関係あるんだろう。


「大丈夫だよ。だって俺が推したんだよ?」

優しい目で真っ直ぐ見つめられると、思わずそのまま頷いてしまいそうだ。


ダメダメっ!
こんな状況で片思いの感情に左右されちゃいけない!


頷く気配のない私を見て、木崎君は肩をすくめた。

「流石にこのままでは納得出来ないか。当然だよな。分かった。今夜、時間取ってくれる?話せる事だけでも話すよ。
正直、移動を撤回するのは難しいんだけど‥‥聞いてくれるか?」


木崎君の真摯な表情と態度に私はうなずいた。