無言でズンズンと歩き、そして、左に曲がった。

彼女は手を引っ張られていたので、倒れ込みそうになった。

まだ真っ直ぐ歩くつもりが、突然曲がるという行動に体が対応しきれなかったのだろう。

そして俺は、彼女を受け止め、抱き締めていた。

持っていた鞄なんか、その辺に放り投げてある。

「村上……クン?」

ギュッと力の限り抱き締めてしまう。

「ちょっと、痛い……。」

小柄な彼女はスッポリと俺の腕の中に包まれてしまっている。

「ごめん、、、俺、君の事、壊してしまいそうだ。」

痛がっているのに、自分が押さえられず、うまく力加減が出来ない。

「村上君?大丈夫だよ。
私、そんな簡単に壊れたりしないから。」

彼女も鞄を手放し、俺の背にギュッとしがみついてくるのを感じて、やっと少し力を抜く事が出来た。

「痛くしてゴメン。

ーーー弟の幸次郎から聞いた。

俺、嫉妬した。」

「村上君……、大好き。」

小さなくぐもった声だったけど、確かに彼女はそう言った。

彼女がとても愛しくて、何度も頭に口付けを落とした。
ずっと、このまま離したくなかった。

「俺、こんな奴でゴメン。」

「うん。」

彼女はそう言って、俺の胸に頬をこすりつけてきた。

ああ、このままキスしちゃおうか。
でも、ここは通学路のすぐ脇の公園だし、色々な所から丸見えだろう。

やっぱり、ファーストキスに相応しい場所とは言えないだろう。

しかも、こんな激情に流されたような形ではしたくなかった。

俺の理性の残っているうちに、離れなくてはいけない。