委員会を終えて教室に行くと、いつもはいる川野がいなかった。

そうか、篠田が学校休んでいたもんな。

やっぱり、俺の事は待っててくれないんだ。

俺は篠田のついでなんだな、と少しがっかりする。

まあ、仕方がないか、と自分を慰めながら鞄を持ち、帰ろうとした。



とその時、教室の戸が開く音がして見ると、川野が入ってきた。

今日はもう会えないと思っていたので、嬉しくなる。

「川野?」


何だか様子がおかしい。

自分の席に向こうを向いて座り込んだ彼女に近づいた。

肩が震えている。

左手首を押さえているようだ。

「何かあった?」

彼女は首を振る。
言いたくないのか、言えないのか。

ーーー俺は彼女の右手を避け、その下にある左手首を見た。

…………赤くなっている。

誰かにギュッと掴まれでもしたのだろうか。


重ねて問おうとしたが、彼女は首を振り続け、何も言わないつもりのようだ。






俺は痛々しい左手首に口付けた。

かわいそうに。

怖い思いをしたのだろうか。

これをやったのは、オトコだろうか。

俺のーーー俺の彼女にこんな事をするなんて許せない。

そう、思うと堪らなくなった。

そして俺は、彼女の手首に歯を立ててしまっていた。

「痛っ!!」

その声で、ハッとして離す。

はぁ、やってしまったよ、俺。

もっと、理性的にならなくては。

「悪い。俺の印つけちゃった。」

歯形が付いてしまっている。
痛い思いをさせてしまった。

「俺にも印つけて。」

左手を彼女の目の前に突き出す。

彼女は戸惑いながらも、歯形を残した。



ああ、メチャクチャ抱き締めたい!