みんなみたいに上手に生きられない君へ

「渡辺くん、渡辺くんまって。渡辺くんってば!」



頭の中が真っ白になって飛び出してしまったけど。

三階から一階おりた二階の階段の踊り場のところで渡辺くんを見つけると、いつのまにか私は無我夢中で渡辺くんの右腕を両手でつかんでいた。

ふりむいて私を見るととまってくれたけど、無言で迷惑そうに見てくる渡辺くんに何を言っていいのか分からないけど、このまま離せなくて、その手にしがみつく。



「どこいくの?」

「帰る」

「きょ、今日は帰るだけだよね?
明日からは、くるよね?」

「何なの?ほっといてくれない?
俺と斉藤さんって、仲良くなかったよね?」

「ほっとけないよ......、だって......」

 

仲良くはない、たしかに仲良くはなかった。

自分でも何で渡辺くんを追ってきたのか、よく分からない。

友達でもないし、好きな人でもないし、普段なら男子に対して自分から話しかけられないのに。