【2020@ミーティングルーム】

 ガラス張りのミーティングルーム。

 テーブルの上には紙コップに入ったコーヒーが5つ。

 あたしは、一口飲んで、「熱っ!」と叫ぶ。

 ミーティングの時間になっても姿を現さないプロデューサーとマネージャーを、メンバー全員で待っているのだ。

「来ないね~。風ちゃん、電話してよ」

「でもまだ5分しか経ってないし、もう少し待とうよ」

「え~でもなにやってんだろうね~」

 あたしは、必要以上に語尾を伸ばして、ご機嫌斜めをアピールした。

「あ、ねぇ、スバル?」

 スバルは音楽雑誌に目を落としたまま、反応をしない。

「え?なに?無視ですか?」

 あたしが語気を強めると、ドラムの風太(ふうた)がスバルの肩を“ちょん”と叩いた。

「あ?え?なに?」

「陽愛ちゃんが、声掛けてるよ」