深夜2時。

 真夜中に届いた1通のメールに、心臓が飛び跳ねるくらい驚いた。

 差出人が、憧れのアーティスト「北斗」だったからだ。

 あたしは何度もパソコン画面を見直した。

 最初は、いたずらかと思ったが、メールの文面はどう考えても本人だし、もちろんあたしには思い当たる節があった。

 あたしは、彼がリーダーを務める演劇集団の「歌姫募集」というオーディションに密かに応募していたのだ。

 充晴に裏切られ、バンドも辞めさせられ、歌う場所をなくしたあたしは路頭に迷っていた。さらに、スバルのバンドの活躍といい、あたしの頭は痛むことが多かった。

 過去の恋愛は片付けられても、「音楽」という夢は諦められないし、そんな同じ夢を着実に歩んでいる彼らが、うらやましくて仕方がなかった。

 だからあたしも、なんとか追いつこうとしたのだ。

 それが、北斗の主宰する演劇集団「歌姫募集」に応募したきっかけだった。

 あたしは、ドキドキしながら、またメールをスクロールさせた。