斜め前。


入口のドア付近から、ひそひそと聞こえる陰口。


「若草さん図々しいっての……!
マジうざいっ…」


恐らく先程の視線の犯人ー。


「美麗!?」


同じく席に着いた梨花が、
スタスタと歩いていく私に声を掛けてきた。だけど無視して歩く。


「安藤さん」


ひそひそ話してたのは安藤さんとその一味。


「なっ…何よ?自慢でもしに来たの〜?ウザいんだけど!」


私が声を掛けに来た事に驚いたのか、
一瞬ひるんだ様に見えたが、強気な態度で睨む安藤さん。


ーーさっきは教室を飛び出しちゃったけど、今は梨花と………前川君のお陰でちっとも怖いと思わない。


他の皆はおしゃべりに夢中でこちらに気づいていないから好都合。


「さっきから何?私は恋愛とかどうでも良いの。性格がそんなだからモテないんじゃない?」


言ってやると、みるみる安藤さんの顔色が赤くなっていく。


「ふざけんな……」


安藤さんの取り巻きは、あわあわと慌てている。


「……言いがかりあるならまた今度聞いてあげる。もう授業始まるしね。」


ワナワナ震えている安藤さんに背を向け
席に戻る。


「美麗、何も言われなかった?」


いかにも心配そうに梨花が尋ねる。


「大丈夫大丈夫!スッキリしたよ」


……本当にスッキリした。
いつも私を目の敵にしてる安藤さんに、
仕返しができた。


「何かあったら、言ってよ!」


梨花の言葉に顔を綻ばせる。


「ありがと。」


そして。
数学の教師が入って来て、午後の授業が始まった。