頭がぼーっとする。


「っ…咲!羽咲!」


「え…あ、愛菜。どうしたの?」


「どうしたって…なんか顔色悪いよ?」


「そうかな…寝不足だから?」


「そうなの?寝不足って、何があったの?」


「んー。考え事かな…」


「考え事?相談のるよ?」


「…相手がいる人に『そばにいたい』って、


言うってどういう事かな…って。」


「相手って、恋人とかそういう意味の?」


「うん。」


「んー。どういうシチュエーションで言われ


たかにもよるけど…いい感じの雰囲気で言わ


れたなら好きって事じゃない?」


「いい感じの雰囲気…」


「で、誰に言われたの?」


「え?」


「寝れないほど悩むって事は、かなり深刻で


しょ?てことは、羽咲自身の事なんじゃな


いかな、って思って。」


「さすが過ぎる…愛菜。」


「で、誰?」


「…須藤 海志さん…って人。」


「須藤 海志さん?誰それ?」


「んー。綺麗な顔した左目眼帯イケメン。」


「き、綺麗な顔した左目眼帯イケメン…?」


「うん。」


「はぁっ… 」


「?なに?なんでため息つくの?」


「なんで、羽咲だけイケメンに好かれるのよ


ー!」


「私だけって…そんな事言ったら…」


愛菜の後ろから…


「愛菜。俺がいるでしょ?」


レオン君が愛菜の後ろから抱きつく。


「ひぃぃぃぃっ!」


「僕の可愛い愛菜。」


「あはは!仲いいね、二人とも。」


愛菜の説得以来、すっかり丸くなったレオ


ン君。


なんか、キャラ崩壊してるような…


まぁ、いっか。


「てか、須藤さん。だっけ?」


「え、レオン君、聞いてたの?」


「うん。ずっと愛菜の後ろにいたからね。」


「きもい。」


「あんっ♡そうやって罵られるのも、愛菜な


らいい♡」


前言撤回。全然良くない…


最高にキモイよ、レオン君…


愛菜は呆れ状態。


返す言葉もないよう。


「…で、あんたその須藤って人知ってんの?」


愛菜は無理矢理話を戻す。


「んー。確か、前までここらで最強の族の総


長じゃなかった?」


「族!?まぢで言ってんの、それ!」


「いや、同一人物かどうかわかんないけど…


だって須藤って苗字全国184位の多さだから


ね。」


「そのいらんランキング紹介すんな。」


「てへっ☆レオン君豆知識でしたっ!」


「で、本当に須藤って人だったの?」


愛菜、華麗にレオン君のギャグをスルー。


ご愁傷様です…


「うん。須藤さんだった。でも、族の総長な


んて…そんな風に見えなかったけど…」


むしろ、やさしそうだった…


「まぁ、人は見かけによらない。っていう


し。」


「あ、でも。その族、もうないよ。」


「え?なんで?」


「僕もそこまで知らないけど、なんか『白銀


の狼』っていう人がいたんだってー。」


「『白銀の狼』?何その中二病な名前。」


「なんか、めっちゃ強かったらしくって。他


にも沢山の族を一人で潰したらしいよ。」


「怖っ!羽咲、大丈夫?」


「う、うん…」


「まぁ、さっきも言ったとおり、その人が本


当に総長だったとは限らないし。」


「そう、だよね…」


「気にしない方がいいよ!羽咲。」


「うん…」


「しかも、羽咲にはかっこいい宇佐木さんが


いるでしょ!」


「う、うん/////」


「今は宇佐木さんだけ見てなさい!」


「うん。」


「じゃあ、愛菜は僕を…」


「あたし、トイレー」


愛菜…スルーがウマすぎだろ…


それに耐えるレオン君もタフすぎ…


…でも。


そうだよね。


私には宇佐木さんがいる。


ずっと一緒にいるって決めた人が。