「彼のことは全て聞いているよ」 いつもよりも低いトーンに、わたしは怖くなって足元に俯いた。 滅多に叱らないお父様でも、今回のことはさすがに怒るよね……? ガクガクと震えながら、次の言葉を待っていると── 急に頭の上に重みを感じた。 それも頭を撫でられるような感覚。 思い切って顔を上げてみると、わたしの頭に手を乗せたお父様と目が合う。 ……え……え? 怒って、ない……?