本当は薬を飲ませたら、すぐ仕事に戻るつもりでいた。



──けど、やっぱり穏花を一人にすることは出来ない。



今日の予定を変更だ。



1日つきっきりで看病に専念することに決めた。



これも執事として大事な仕事。



今は何よりも穏花のことが優先だからな。




「…ん…ん……」




夢に魘され苦しそうにする穏花を安心させるように、俺は手を握る。



お母さんの夢でも見ているんだろうか。



幼いときにお母さんを亡くし、海外出張してるお父さんともほとんど会えてない状態。



召使いが家に居て、何一つ不自由な暮らしをしていなくても。



常に近くには家族が居ない。



そんな環境に穏花は今までどれだけの我慢をしながら、寂しい思いしてきたんだろう……。