「フフ、なんて冗談ですよ。
試すわけないじゃないですか」
叩いていた手を八乙女に掴まれ、顔を見上げると──
さっきまでのビターだった表情が
甘いシュガーに溶かされたみたいに
優しい表情になっていた。
そして、その甘い表情に長く見とれていたわたしは、完全に油断してて。
オデコにキスされた。
「な~……、」
「本当に行って欲しくなかっただけです」
結局は八乙女を許す甘いわたしだ。
「お嬢様の困ってる表情が可愛いから、
つい。意地悪しちゃいましたけど、
意地悪しすぎましたかね? すいません」
ムカつくと思えば、キュンとさせられて。
ほんとに何もかもズルすぎるから………。
これじゃあ、好きになれない方が無理だ。