手紙 ーだいすきなキミへー

今回の私の入寮のきっかけもまた、お父さんの仕事の都合だった。

なんと今度はアメリカへの転勤。

最初は家族みんなでの引っ越しの予定で両親の中では話が進んでいたのだけれど、私はそれを拒んだ。

英語なんて中学の授業で少し学んだ程度だし、高校での勉強はきちんと日本でしたいと思ったからだ。

お父さんは私の考えに最初から賛成してくれていたが、お母さんは日本に私を1人で残すことも、お父さんを1人でアメリカに行かせることも嫌だと渋った。

そして最終的な結論として寮がある学校に入学するという条件で、私が日本に残ることに賛成してくれた。

だけど、この辺りには寮のある学校がないため、幼稚園の頃まで住んでいた町にある寮ありの高校に入学することを決めた。

そして無事に受験にも合格して入寮の許可も出たので、今こうして引っ越しの準備をしているところなのだ。

家も全体的に整理されてしまい、段ボールが増えてきていた。

「寂しいわね」

お母さんはそう呟いて私の部屋を出ていった。



そして3月末に私が両親のアメリカ行きよりも2日早く生まれ故郷へと向かった。

学校の敷地内にある寮に向う途中に街並みを眺めていたが、あまり私が知っているこの町と変わっていなくて嬉しく思った。

「さあ、頑張ろうじゃないか!」

入寮を済ませて私は今日から始まる新生活に意気込んだ。