そんな私を見てお母さんが「どうしたの?」と覗き込んできた。

そこには真っ白な紙に水色のクレヨンで書かれた『だ い す き』という文字があった。

「あら、これ覚えてるわ。文香が『ラブレターだ!』って騒いでたやつね」

「はははっ、懐かしいなぁ」

「結局、送り主は見つからなかったのよね」

そう、これは私が人生で初めてもらったラブレター(正直、本当にラブレターかは定かではないけれど)。

ある日幼稚園に行った朝、ポストを見るとこの1通の手紙が入っていたんだ。

見た瞬間、ドキッとして気持ちが高まったことを思い出した。

送り主を知りたくてその日から色んな子に尋ねたけれど、送り主はわからずじまい。

実は卒園後、父親の仕事の都合で隣の県、今住んでいるこの土地への引越しが決まっていたので、この送り主探しは迷宮入りとなってしまった。

「これ、誰からだったんだろうなぁ」

手紙を読み返すのをそこで止めて、それらを引越し用のダンボールに入れた。