手紙 ーだいすきなキミへー

色々な話をしている中で、千波が思い出したように例の“手紙”の話をしだした。

「文香が探してたあの手紙の送り主って結局見つかったんだっけ?」

「あ…ううん、結局見つからずじまいだったよ。でもね、この前引っ越しの準備してる時に見つけたんだ」

みんなが送り主は誰だったんだろうかと話す。

「本当に、送り主が誰だったか知りたかったんだけどな…」

私がそうつぶやくと、急に昴が「もう10年も前の話だぞ、もう色々と時効だし、どうでもよくね」と言った。

「え~、どうでもよくないでしょ。気になるよ~」

「千波のじゃないけどね」

「もういいだろ。やめようぜ」

そういう昴はなんだか機嫌が悪そうな、そんな感じ。

「何よ~。…あ、手紙の送り主に対する嫉妬?10年経ってもこうやって文香がその人のこと思い馳せてるからって…」

「ちげーよ!もうやめだ、やめ!」


…少しだけ、昴の耳が赤いような気がした。

『嫉妬』という千波が言った言葉を頭の中で繰り返して、ないないと思いながらも自分自身の耳が熱くなった。



もしそうだったら嬉しいな、なんて思ってしまう私がいた。