あれは春を待ちわびる、高1の3月の半ば。 あたしはちょうど理科総合の移動中で、廊下を歩いていた。 「落としたぞ」 「え……?」 軽く肩をたたかれ、呼び止められた。 振り返ってみるとそこには、いかにも軽そうで派手なチャラい男子。 完全に校則違反な明るい茶髪。 両耳にいくつもついたピアス。 着崩された制服。 ……でも、整った綺麗な顔立ちにあたしは目を奪われた。 「あ、ありがとう……」 彼の顔に見とれながら拾ってもらった生徒手帳を手にする。 「………… ございました、だろ?」