「おまえさ、オーディションもうすぐだろ?」


「うん。1週間後」


狭い歩道を、ふたりくっつきながら歩く。


傘が邪魔をするので、何度か「ごめん」と謝りながら。


コウちゃんは、傘がぶつかることにイライラしたのか、私より少し前に出た。


ほらね。

雨が降っていなかったら、隣同士で歩けたのに。


というかそもそも雨が降っていなかったら、今日も自転車の後ろでコウちゃんの匂いを独り占め出来たんだ。


だからやっぱり、雨は嫌い。


私はコウちゃんに見えないように口を尖らせる。


「どうなの?」


「え?」


「オーディション。突破できそうなの?」


コウちゃんは私を振り返らずに言葉を続ける。


「どうかな......。やることはやってるけど......」


「.........」


「自信、ない、かな......」