コウちゃんまで、届くように。


ボールと一緒に、私の想いも乗せる。


バレない程度に。


私は、目を開けた。

ぼんやりとした視界。


徐々にピントが合ってくると、先程まで暗闇で見えていなかったコウちゃんの姿が、ハッキリと見えたんだ。


まるで昼間のように、明るい。


雲間からさした月明かりが、グラウンドを明るく照らしている。


コウちゃんの白いシャツが反射して、余計明るく見えた。


お願い。

コウちゃんまで、届け!!


トンっ!!と、軽い音で飛んでいったボール。


キレイな曲線ではなかったけれど、私の足からはなたれたボールは、コウちゃんの元へとコロコロ転がって行った。


それを、コウちゃんが足でキャッチする。


「やればできんじゃん」


コウちゃんが、笑った。


ドクンドクンドクンドクン。


ジンワリと頬が熱を持ちだし、コウちゃんを好きだという気持ちが私の中を暴走する。


「おまえ、やればできるんだよ」


「.........」


「なんでもそう。サッカーも、勉強も、部活も」


部活、も......?


「変な悩みばっか抱えてるから、出来なくなんの」


「え......?」


コウちゃんがボールを手に持って、私に近づいてくる。