「もう一回、俺に蹴ってみろ」


そう言って、コウちゃんがボールをこちらに蹴る。


私の時とは違い、軽やかな音で私の元に飛んできたボール。


きちんと計算されたかのように、ぴったり到着した。


すごいな......。


完璧だ。


私はふらつきながら足でキャッチし、右足で押さえた。


「俺が今、どこにいるのかイメージしろよ」


コウちゃんが今、どこにいるのか。


私はもう一度目を閉じ、ゆっくり呼吸する。


少し離れている、コウちゃん。


長身で、程よく肌が焼けていて、筋肉質な二の腕が出ていて。


そして、今、私を真剣に見ている、コウちゃん。


私の、大好きな人。


「イメージしたら、ここまで届くように力一杯蹴るんだ。莉子の場合、強すぎると思うくらいの強さで蹴れ」