「莉子~、ちょっと休憩しない~?」
まだ15分くらいしか練習していないのに、息の上がっている愛美。
ヘナヘナとグラウンドに崩れ落ち、私に向かって泣きそうに唸った。
私は水を飲んでくると愛美に言い、グラウンドと校舎の間にある水道に向かう。
私は愛美ほど疲れてはいなかったけれど、喉がカラカラだ。
キュキュっと蛇口を捻って水を出す。
水道水は生ぬるかったけど、喉の渇きを癒すには十分だった。
ゴクゴクと水を流し入れ、口元にしたたる滴を手の甲で拭った、その時。
「また腹壊すぞ」
突然背後で声が聞こえ、ドキリとして振り返った。
その勢いで、拭いきれていなかった滴が、ジャージの首もとから体の中に少しだけ流れてきた。
「こ、コウちゃん!」
白のユニフォーム姿のコウちゃんが、クールな表情で私を見ている。
カッコよく言えばクールだけど、ただの無表情。
「校舎に行けば冷水器があるだろ」
「あ、うん」
「おまえ、腹弱いんだから、水道水はやめろ」