舞台で話す中年太りの小柄な校長の後ろには、我が校が誇るサッカー部のイレブンが立っている。


その中に、私の幼なじみでもあるサッカー部のキャプテン、真田康介(サナダ コウスケ)がいる。


相変わらず、感情を表に出さないクールな表情で、全校生徒の方を向いていた。


「彼らのプレイは安心して見ていられますね! 特に、キャプテンの真田くんのロングシュート! 先生も本当に興奮しました!」


「莉子、莉子!」


校長の話の途中で、背後から小声でトントンと肩を叩かれた。


親友の愛美だ。


「真田くん、何だか試合が終わる度にカッコよくなってない?」


「そ、そう?」


私は首だけで振り返り、愛美にドキリとした顔が見られないように答えた。


肩までの黒髪で、横顔を出来るだけ隠すようにして。


私はすぐに前を向いたけど、好奇心旺盛の愛美が目を輝かせて舞台上のコウちゃんを見ているのが気配でわかった。


私も、チラリ。と、目だけをコウちゃんに向ける。


舞台の右端に、キャプテンとして堂々と立つ姿は、まさにコウちゃんが小さい頃から夢見てきた自分だと思う。