涙で湿った頬を拭う。
そして、ようやく力の入るようになった足で立ち上がった。
私の左手に収まる本物のトランペットとは似ても似つかない形だけれど、不安や恐怖心を吸収してくれたような気がする。
「莉子。おばさんのことは心配するな。絶対大丈夫だから」
うん......。
お母さんは、大丈夫だよね?
「全国大会への切符を手入れて、目が覚めたおばさんを安心させてやろうぜ」
コウちゃんは、優しく目を細くして微笑んだ。
お母さんを安心させる......か。
そうだよね。
お母さんは、ひとりでたくさんのことを抱えすぎだ。
私の夢だった普門館への切符を手に入れたら、少しは安心してくれるかな?
そして、この大会が終わったら、私がお母さんのことを守って行くんだ。


