さっきまで肩で息をしていたコウちゃんは、今は普通に呼吸をしている。
「いいか。おばさんは俺に任せて、おまえは演奏に集中しろ」
「.........」
「おばさんは大丈夫だから。俺がずっと病院にいるから」
コウちゃんは、優しい眼差しで「な?」と眉を上げた。
さっきまでの恐怖心はどこに行ったのかわからない。
「コウちゃん......どうして来てくれたの? 来ないんだと思ってた」
まだ足に力が入らず座り込んだまま聞くと、コウちゃんはため息をついて、ズボンのポケットをまさぐり始めた。
「本当は、来ないつもりだったんだけど」
コソコソとポケットをあさる。
「心配性ですぐに変な想像ばっかしてパニックになるおまえが失敗しないようにと思って来たんだ」
そう言って、ポケットから取り出したものを私にしっかり持たせた。
手におさまったのは、フェルトで作られたおまもり。
「......これ」
「不器用だとか言うなよ。俺にはそれが限界だったんだから」
オレンジ色のフェルトに、トランペットの形に切り抜いた黄色いフェルトが縫い付けられている。


