「先生、なにかあっ......」
「白石、落ち着いて聞いてくれ。いいか、落ち着くんだぞ」
「は、はい。でも、急に言われても、何をどう落ち着けばいいのか......」
私が苦笑すると、先生の表情は一段と深刻になった。
「先ほど、お母さんが倒れたらしい」
......え?
お、お母さん、が......。
倒れた......?
「え......先生......た、倒れたって.....」
脳裏に浮かぶのは、リビングで倒れていたお母さんの姿。
あの時の恐怖がよみがえり、膝が震えだす。
楽器を持っている手からも、力が抜けていった。
「うそ......。だって、朝は普通だった......倒れるって、なんで? どこで?」
頭はパニック。
だけど、何をしたらいいかわからなくて、体が動かなくなった。
ただ、ボソボソ呟くだけ。
「職場で、出勤直後に倒れたらしい。今は落ち着いているって。本番前だが、私には伝える義務があるから......」
先生の言葉は耳には入ってきた。
だけど、真っ白になった頭には入ってこない。


