「早く乗れよ」
顔を使って後ろの荷台を差すと、私の肩からスクールバックを奪って前のカゴに入れた。
相変わらず袖を捲っているコウちゃん。
ハンドルをギュッと握って浮き出てくる血管に、ドキリとして、私は慌ててコウちゃんの後ろに横向きに座った。
私の邪魔にならないように、斜めがけするエナメルバックを、さりげなく横によけてくれる。
そんなひとつひとつの行動に、私の恋心は暴れ狂うんだ。
いつからコウちゃんを好きになったのかはわからない。
気がついたら、コウちゃんを見る度にドキドキしていた。
コウちゃんがペダルをこぐと、朝の暖かい新鮮な風が頬を撫でた。
コウちゃんの白いシャツが、ハタハタと風になびき、コウちゃんの匂いを運んでくる。
香水をつけているわけでもないのに、いい匂いがする。
柔軟剤でも、シャンプーの匂いでもない。コウちゃんの匂い。
少し気持ち悪いかもしれないけど、毎朝の私の楽しみなんだ。