「だけどさ、みんな本番が近づいて気持ちが引き締まってるから、県大会の時よりよくなってるよな」
「うん。去年より自由曲は難しいけど完成度が高いような気がする」
木管楽器、金管楽器、弦楽器、パーカッション。
演奏の中のみんなのバランスがとてもよくとれていて、難易度の高い曲だけど、楽譜の音符が楽しそうに躍り出てくる。そんな感覚。
曲をようやく自分達のものにできつつあるっていう感じだ。
曲の仕上がりに満足していると、突然立花くんが腰をグッと折って私を覗きこんできた。
あまりの近さに、麦茶の入った紙コップをギュッと握る。
な、な、なに。
私は目を見開いてパチクリ。
「あ~あ、唇くっきり跡がついてる」
立花くんに言われ、私は目を泳がせながら『た、立花くんもじゃん!』と早口で言った。


