「だからおまえも、自分のやりたいこと探してみろよ」


「いたっ!」


シワの寄った眉間を突っつかれ、私は不機嫌になりながらコウちゃんを見上げる。


「悩みすぎて剥げそうになった時はいつでも俺んち来いよ。相談乗ってやるから」


ドクンっ!

心臓がいきなり痛いくらい早鐘を打った。


私って、本当に単純。


俺んち来いよ。なんて。


毎日のようにコウちゃんの家には行ってるのに、改めてそう言われると、鼓動が高鳴る。


これも、幼なじみの特権、だよね。


幼なじみじゃなかったら、簡単にコウちゃんの家なんて行けないもんね。


「わ、私剥げないもんっ!」


ドキドキしてることがバレないように、コウちゃんに吠える。


コウちゃんはウシシと笑って、鞄を肩にさげて教室を出て行った。


その背中をジッと見つめる。


コウちゃんはずるい。


私の気持ち、わかってるようで全然わかってないんだから。


進路を勝手に決めてたからって、私怒らないよ。


怒らないけど......。


大学に行こうが就職をしようが、いずれは離れ離れになるってことだもんね。


コウちゃんの背中を見られるのも、あと何ヵ月かもしれないんだ......。