「......悪かったな」


最初の壁を乗り越えたのはコウちゃんだった。


波の音に消え入りそうな小声だ。


「あの日、ここで言ったこと、本心じゃないから」


コウちゃんの横顔を見ると、目をキョロキョロと動かし落ち着きがなかった。


「完全に八つ当たり......カッコ悪いよな」


ハッと笑うコウちゃんは、一回首を項垂れてから隣の私を見た。


「大丈夫。全然気にしてないから」


「.........」


「ああやってコウちゃんが感情を表に出すのって初めて見たから驚いたけど。だけど、ちょっと嬉しかった」


コウちゃんが「はぁ?」と眉間にシワを寄せた。


「だってコウちゃん、いっつも我慢するんだもん。悩みがあるのにみんなの前ではクールぶって無表情を保ってさ」


コウちゃんが鼻で笑う。


そして、眩しそうに目を細くして日が沈みかけた海を眺めた。