「白石さん」


放課後、音楽準備室で楽器を出していると、入り口から名前を呼ばれて振り返った。


「徳永くん......」


ドアの前に立っていたのは、サッカー部副キャプテンの徳永くんだった。


部活に行く前なのか、制服のまま、肩には白いエナメルバックがさがっている。


コウちゃんも、前まで同じようにエナメルバックを持っていたのに......。


「部活前に、ごめん。ちょっといいかな」


同じ学年なのに初めて話す徳永くんに緊張しながら頷き、私は楽器を置いて廊下に出た。


徳永くんは、吹奏楽部員でごった返す音楽室から少し離れた廊下まで歩いていった。


周りに人がいなくなってから私を振り返ると、徳永くんは廊下に視線を落とし、切な気に眉を垂らす。


「真田のことなんだけど」