「どう? ここ。案外よくね?」
「え? あ......うん、まぁ、いい、かな?」
言葉に詰まりながら答えると、コウちゃんは私を見て「嘘っぽ」と小さく笑った。
「別に嘘じゃないけど、いきなりこんなところに来たから、なんて言うか、ちょっと戸惑ってなんて言っていいのかわからなくて......」
私が苦笑すると、コウちゃんはフンっと短く笑って海を眺めた。
コウちゃんのサラサラの髪も、私のと同様、強い潮風にあちらこちらに踊っている。
だけど、なんでだろう。
ただ強風に煽られているだけなのに、コウちゃんならそれさえもカッコよく見えてしまう。
風に目を細めながら切な気に海を眺めるその姿は、まさに芸術だ。
空が海を藍色に染めている。
波の音と、車道から聞こえる車の音、そして、少し遠くから聞こえる踏み切りの音。
それぞれのパートがリズムを刻み、まるで音楽を演奏しているかのようだった。