「泣いてなんかないよ」


「いや、泣いてたよ」


「.........」


コウちゃんが、私の心を読むような目で見ている。


「莉子のそこ、声あげながら泣いてたじゃん」


コウちゃんの顎が、私の胸をさした。


私は制服の胸の辺りを、ギュッと強く掴む。


コウちゃんは、本当に何でもよく見ているね。


私の弱みも、解決しない悩みも、全てお見通し。


嘘はつけない......。


私が唇を強く噛むと、コウちゃんが急に立ち上がった。


「行くぞ」


「え? どこに?」


ポカンとコウちゃんを見上げる。


「いいから。ほら、急げ。夜になんだろが」


コウちゃんは顔をクイっと動かし、「行くぞ」と言う。


私はわけがわからなかったけれど、先に歩いていくコウちゃんの後を追った。