お母さんは、このまま入院。


まだ目は覚めていないけど、命に別状はなくて、安心した。


「コウちゃん、本当にありがとうね。コウちゃんがいなかったら、私、どうしてたんだろうって......」


言いながら、私は小さく笑った。


「コウちゃんが早く駆けつけてくれなかったら、お母さんどうなってたんだろう。本当、無力って怖いね」


隣のコウちゃんをチラリと見ると、コウちゃんは背もたれに体重を預けた。


「おまえのあとを追ってたからな」


「え?」


「おまえ、泣いてただろ。俺とぶつかった時」


図書室を出てすぐ、感情任せに走っていたことを思い出す。


だけどあの時はまだ、泣いていなかったよ。


必死で耐えていた時だ。