side由乃








「……ねぇ、佐伯、そろそろ離してもらえないかな」





「……違う、蓮琉、でしょ?由乃」







苦笑いを浮かべる私の腕を未だに離そうとせず、大変不機嫌な様子で私を見つめる佐伯。






こんなやり取りをもうかれこれここ、flowers前に来るまで10回はしていた。








佐伯の不機嫌の理由。





それは……







「アイツのことは名前で呼んで、俺のことは名前で呼ばないんだね」







ズバリこれである。



佐伯が言うアイツとは秀のこと。






その他にも、私のことを名前で呼んでいること、役職柄故にいつも一緒にいること、最後に至ってはそもそも幼なじみであること、何もかも全てが気に食わないとブツブツ言っていた。