それから、商談を終えると。


「あのっ、先程は大変失礼致しましたっ。
本当に申し訳ございませんっ…」

真っ先に駆けつけて来た清松さん。


「それでこれ、クリーニング代なんですが…」


「いえ、気にしないで下さい!
むしろ、それで商談もうまく行ったと思うんで…
プラマイゼロって事でっ」


「そんな訳にはっ!
私こそむしろっ、スーツ代を弁償したいくらいなのにっ」


このコの場合、受け取ってもらえない方が困るんだろうな…

だけどきっと、そのクリーニング代は多めに入ってたりして…


「わかりました。
じゃあ後日、正式なクリーニング代を請求するんで。
それでいいですか?」


「え、あ…っはい。

じゃあ連絡先を伺っていいですか?
それであの、シミが落ちなかったら、遠慮なく言って下さいねっ…?」


と流れで、お互い名刺と携帯番号を交換する事に。




奈々ちゃんかぁ…

至って普通の名前だったけど、それはそれで可愛いし、似合ってる。

帰りの車中、清松さんの名刺を眺めて…
天使とお近づきになれた現状に、1人ニヤける。


だからって、この先どうするつもりもないんだけどさ。