「な、何か悪かったな…」





昴は申し訳なさそうに下を向く。





「ううん、気付いてあげられなかった私も悪いから…」





また空気が重くなる。


私は両手で頬を叩いた。


その痛みで溢れそうだった涙をなんとか堪えることが出来たものの、この空気感から抜け出すための明るい振る舞いは上手くいかなかった。


どうしても笑顔がぎこちなくなる。

上げた口角が震える。





「私、かえで君とは中学生の頃から一緒にいるの」





広場の椅子に腰を掛ける。





「最初会ったときは本当に弱々しかったし、私が守らなきゃいけないって。
今はもうそんなこと全然ないのにね…私よりも強くなって頼もしくなった」





かえで君の変化に気付きながら、それを知らないふりしてた。


どきっとする気持ちを無意識に抑え込んでいた。


だって、かえで君は弟だから…


そんな理由で彼本人を傷付けていただなんて。


ダメだ、こんなんじゃ。





「今言ったこと丸々あいつに伝えてやれよ」





目の前にいた昴が私の頭をがしがしと撫でる。


それが一気に緊張を解いて抑えていた涙が流れる。





「っ…かえで君、本当にごめん…」





昴はいつまでも私の頭を撫で続け、私の泣き顔を周りに見せないように隠してくれていた。