「ただいまーー」
買い出しから戻って部室のドアを開けると
「鈴姉ちゃんーー!!!」
とかえで君が飛び付いてきた。
あ、あれ…と昴を指差している。
「だーから、俺だって言ってるだろ!」
どうやら昴の豹変ぶりを受け止めきれないようだ。
「かえで君、落ち着いて。
あれは紺野君で間違いないよ」
そう言ってからかえで君の耳元で
「何か変って言ってたじゃない、隠してるみたいだって…
あれが本性なんだよ!」
すると、はっとして大きく何度も頷いてから昴に近付いて肩に手を置く。
「あんたも大変なんだな…」
昴は反論しようとしていたが同情めいた顔でうんうんと言われては何も返せず、ただただ私の顔を見て何かを訴えているようだった。
何はともあれ理解されて良かったでしょ!
「おーそうだ、お前ら何買ってきたんだ?」
そしてさっきまでの光景が嘘だったみたいに話を振ってくる。
立ち直り早すぎ!
部長は裏の方から衣装をとってきて、私は買ってきたものを広げた。
「次の演目でやるやつだ!
看板作るから手伝ってもらえるか?」
皆で大きく返事をして作業に取りかかった。
そのあとは赤ずきんの配役を発表。
私は主人公の赤ずきん。
昴は狼。
かえで君はお祖母ちゃん。
まーくんは猟師。
部長は裏方で演目決めと台本作りと監督の三束のわらじ。
たまに、まーくんも台詞を決めたりしている。
「かんせーーい!」
少し時間はかかったけど何とか看板が完成。
なかなかのクオリティーだと思う…
「それじゃあ、みんな解散で良いぞー」
部長のその一言で帰る準備をしたものから部室を出ていく。
「また3人仲良しこよしで帰んのか」
ちょっと笑いを含んで言う昴に
「そうですけど、何か?
一緒に帰りたいのー?」
私も冗談混じりに返すと
「そーだなー
まぁ、また今度?」
と私の頭をぐしゃぐしゃにして
「じゃーな!」
と帰っていった。
一体何がしたいんだ…
「うわっ、凄いボサボサ!
あいつーーー!!」
とかえで君が昴を殴りに行きそうだったので必死に止めた。
そして仕方なく手櫛で髪の毛を整え、3人仲良しこよしで帰った。

