恋はたい焼き戦争



次の日になって昴に会うと





「おはよう、鈴ちゃん☆」





といつも通りのキャラに戻っていたので少し戸惑いつつも





「紺野君、おはよう」





私もいつも通り接することにした。


授業が終わり部活の時間になって昴が女子に囲まれている、この光景はもう見慣れたなぁ。





「ねっ、ねっ!昴君はぁ、はちまき交換する相手決まってるの?」

「私と交換しよーよー」





この学校の体育祭でもカップル同士ではちまきを交換するというのが定番になりつつある。


交換を機に付き合うっていう人もいるから、それを狙ってるんだろうなぁ。


まーくんはというと体育祭のことで体育委員と共に先生に捕まっていた。

かえで君も来ない。


よし、一人で行くか。


鞄を肩にかけクラスの子に別れを言ってから部室に向かう。





「失礼しまーす」





部室には向川部長と数人の部員がいた。





「今日は鈴だけか?」





みんな忙しいみたいで…と笑うと部長は





「それじゃあ買い出し行くか!」





と、いきなり言い出した。





「買い出しって何のですか?」





そう聞くと体育祭の部活対抗リレーで使うのを作るそうだ。


今から?!と思ったけど、もうすでに大体のところは出来ていて残るは小物だけだそう。


この頃いろいろバタバタしてたのに一人で作ってたらしい。


部長って女子力高いな…


女子の私が負けているじゃないか!





「行きます!」





元気いっぱいに手を上げる。

ちょっとでも役に立たなきゃ!そう思ったから。





「どんなコンセプトなんですか?」

「今度やる赤ずきんの宣伝みたいな感じを予想してるんだが…」





再来月にある大会で私たちは赤ずきんを演じる。


配役はまだ決まってないけど誰が何を着るんだろう?





「俺の中で何となく決まってるんだ。
鈴はもちろん赤ずきんな!」





そうかなって思いました…だって演者で女って私だけだもん…





「狼は…昴かなって思ってる。
きっと注目度も上がるだろう?」





熱を持った目で語る向川部長。


私は彼のこういうところが好きだ。

とても楽しそうで見ているこっちにも伝わってきて…早く演じたいと思う。


最高の舞台を。





「ああ、それで服はもう出来ているから…あとは頭巾とか花とか、宣伝用の看板だな」





2人でいろんなお店を回りながら材料を集めていく。





「これで全部…ですかね」

「ああ、そうだなー!疲れた…」





そんな私たちの回りにクレープのいい匂いがしてきた。


ぱっとお互い顔を見合わせる。

もちろんキラキラした目で。





「食うか!」

「食べましょう!」





私はいちごチョコ。

部長はチョコバナナ。


荷物をいっぱい抱えて、それでも頬張る。

座るところがなかったから仕方なく歩きながら。





「めちゃくちゃ美味しいです…!」

「俺のもすげぇ上手いよ!」





2人でふふふと笑う。

部長のクレープも美味しそうだな…


そんな視線に気付いたのか





「んー、食うか?」





そう言って差し出してくれた。

わぁ、いい匂いする…


パクッと1口もらってから部長は





「俺のなんて嫌かー…」





と言うけれど、私はもうすでに食べてしまっていたので





「美味しいです!」





と満面の笑みを浮かべて、部長もどうぞ!と私のクレープも渡した。





「え?あ、ありがとう」





少し驚いていたが部長も1口食べて一瞬で笑顔になった。



少し歩いていると部長は、あ!と声をあげて手を振った。


そっちを見るとその人も私たちを見ていて駆け寄ってくる。