恋はたい焼き戦争



「高山、沢田!ちょっと良いか?」





終わりの会が済んで部活に行こうとすると、そう先生に呼び止められた。


紺野君は先に部室へ向かうようだった。





「あ…はい。何ですか?」





すると廊下で話そう、と言って何故か人が少ない所に呼ばれた。





「実は紺野のことなんだが…」





紺野というワードが出て私達は顔を見合わせお互いに、またかとため息をついた。


嫌々ながら話を聞くと、どうやら先生はクラス1の俊足らしい紺野君にリレーに出るべきだと勧めたそうだ。





「だが1つ条件をつけられてな…」





リレーに私が出ること、それが彼の提示したものだった。





「先生はどちらでも良いんだ。
2人とも部が同じだし話し合いやすいだろう?高山も中立な立場でみてやってほしい」





はあ…と渋々、了承はしたものの紺野昴…考えていることが全くといっていいほどわからない。


私を引き合いに出してどうするつもりなの?



そして部室へ行くとドアの向こうから話し声が聞こえた。


かえで君は今日部活を休んでいる。

だから向川部長と紺野君のはずなんだけど…


2人本当に仲良いんだなぁなんて思いながらドアノブに手を伸ばし開ける。





「おーやっと来たか、シークレットカップル!」





ん…?





「「誰…」」





私の声とまーくんの声が重なった。





「おいおい、何だよ〜息もぴったりってか?」





え、いやいやいやいや…そうじゃなくて。


突っ込むことがいっぱいありすぎる。





「本当に誰…?」





容姿は紺野君、紺野昴のはずなのに全てが違う。


髪も前髪をかきあげた感じになってるし、足も組んで…それに喋り方が違う。





「紺野君の…そっくりさん…?」





私がそう言うと紺野君と向川部長までもがお腹を抱えて笑いだす。





「はあーー…おっかしー
俺は俺だっつーの!つか紺野君とかキモいわぁー」





私の紺野昴に対するイメージが音を立てて崩れていく。





「え、いや。でも…紺野く…」





言いかけると





「だーかーらー、昴で良いって!」





突然の大きな声にびくっとなる。


本当に誰なの…?