「ちょっと演劇に興味出てきたんだよねー」
そう言う紺野君と深いため息をつくまーくんと共に部室へ向かう。
ドアを開けると既にかえで君と向川部長がいた。
「ようこそ、昴」
終始ニコニコしている部長ともっとため息が深くなるまーくん。
そしてまた警戒心が丸出しのかえで君。
騒がしくなるなぁ…
それから練習を始めたが私達が思ったような悲劇にはならなかった。
予想とは違い誰も来なかったから。
「あぁ、そうそう。みんなには練習中は来ないでって言っておいたから大丈夫だよ☆
皆そわそわしすぎでしょ」
はははと笑う紺野君を少し腹立たしく思いながら内心ほっとしていた。
…あ、いつもと変わらない穏やかな日々が壊されない…
ふとまー君の方を見ると彼もほっとしているようだった。
かえで君は相変わらず睨んでたけど…
結局は何も起こらないままその日の活動は終わった。
部室にはいつも施錠をお願いする向川部長と紺野君が残った。
あれ、一緒に帰るって言わないんだ…
いつもの彼の様子との違和感を覚えつつも、そこまで気にせずまーくんとかえで君の2人と帰った。
「ねえ、あいつ何なの?」
後ろを気にしながらかえで君が話始める。
「何でこんなに鈴姉ちゃんの後を追ってくるの?」
「鈴を気に入ったんじゃないのか」
真顔で言い放つまーくんの言葉を
「ないない!あんなに女の子選び放題の人が私なんてあり得ないよ、きっとからかってるだけ!」
必死に否定する。
「俺あの人何か変だと思うんだよねー」
「私もそう思う!何か変だよね…」
なんて話をしながら不服にも帰りは彼の話題で持ちきりだった。
それが、いつもより周りを気にしなかった原因だったのだと思う。
次の日まさかあんなことが起こるなんて思ってもみなかった。

